小野耕資『日本の根幹 農・神道・アジア』の書評が、一水会の『レコンキスタ』(令和6年8月1日号)「好著紹介」に掲載されました。
本書は大アジア研究会代表を務める著者が『維新と興亜』『国体文化』などの媒体に発表した論文を、農、神道、アジアという切り口で再編したものだ。
「西洋近代の劣勢を克服せんとする哲学的思索の表明」(まえがき)と述べている通り、本書を貫くのは、アジア諸民族が自らの「根幹」に立ち返り、西洋近代文明を超克するという志である。そこで想起されるのが、大アジア研究会の『大亜細亜』創刊の辞だ。
〈欧米型の政治経済システムの弊害が世界を覆うようになって久しい。それはデモクラシーとキャピタリズムの限界として露呈してきた。…今こそ日本人は、「天孫降臨以来の我が国の天職」たる大亜細亜の理想を回復し、文明転換の流れを率先して牽引すべきである〉
本書を読むと、農、神道、アジアという三つの視座が相互に連関しており、究極的には一体となって西洋近代文明の超克の原動力となることがわかる。
「農と日本人」では、農業の機械化、効率化を批判した橘孝三郎などの農本主義者の思想的価値が重視されている。また、「東洋においては、永遠とは繰り返し」という神道者の幡掛正浩の言葉を取り上げ、春に種を植え、夏に育ち、秋に収穫し、また次の春が来れば種をまくという循環の中に永遠を見る。ここで指摘されているのは、過去から未来へと一直線に続く西洋近代的時間軸とは異なる時間軸の存在だ。
「古神道と皇道経済」では、西洋近代が生み出した資本主義の経済原理を厳しく批判し、風土との調和、自然の恵みへの感謝、敬神道徳倫理の実践を重んずる世界観への転換を訴える。
「現代アジア主義を論ず」では、西洋近代文明の欠点であった非人間性の克服と、武力金力といった力への盲信から覚めることを至上命題とすべきだと説き、アジアで培われた世界観への回帰を主張する。そして、アジア主義を「西洋近代の残虐性を克服するため、アジア本来の価値観に立ち返ることである。それによって西洋近代の負の側面を乗り越える思想的哲学的営み」と位置づける。
多くの人が本書を手に取り、「日本の根幹」と「西洋近代の超克」を考えることを期待したい。